東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 設立趣意書会則
東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 The Society of Urological Disease at Tokyo Women's Medical University
■ 2020年度年報
ホーム1.はじめに2.医局構成・新入局員紹介3.東京女子医科大学腎センター泌尿器科および関連病院入院・外来・手術統計4.東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2021年度の目標5.関連および協力施設 活動報告・2021年度の目標6.業績目録7.あとがき

4. 東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2021年度の目標 >> 腎移植・腎不全・腎血管外科部門

2021年年報

免疫学の面白さ

抗ドナー抗体を大量に持つ高感作患者に対し脱感作目的に移植前にガンマグロブリンを大量投与することが2019年12月に本邦で保険収載された。

ご存じのとおり抗ドナー抗体が関与する拒絶反応は、急性細胞性拒絶反応とは異なり移植腎喪失という悲劇的な結末の可能性を伴うハイリスクな病態である。移植腎生検において傍毛細血管領域への微慢性のC4dの沈着、血管炎および糸球体炎などが観察され、患者の血清中には抗ドナー抗体が検出される。これらの治療戦略としては、抗ドナー抗体の除去および抗体産生の抑制である。現時点での具体的な選択肢としては、血漿交換療法(血液吸着)、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェティール、大量ガンマグロブリン療法、抗CD20抗体(リツキシマブ)および脾臓摘出などが報告されており、各施設間によってこれらの組み合わせや投与量は異なるものの、クロスマッチ陽性患者を陰性化(脱感作)させ、移植し透析離脱に導くことに成功している。われわれは大量ガンマグロブリンおよび血漿交換を組み合わせた治療法を2011年より開始している。今まで40名以上の患者に使用しその効果は充分に期待できるものと考えている。

その一方でアメリカでは合理的な臓器分配プログラムを行っている。医療経済的にハイコストになる高感作者の脱感作治療を考えるより、臓器の提供があった時まずはその臓器を拒絶しないような高感作者を探す仕組みである。アメリカでは日本よりはるかに多い高感作者がいてクロスマッチが陽性に検出されるため待機時間が長くなって命を落とす。その解決策として考えられた合理的な仕組みである。

未だに臓器提供すら進まない本邦ではなかなかこのような仕組みはできそうにない。日本の腎臓移植のリーダーとして東京女子医大泌尿器科は、保険収載されたガンマグロブリンをどのような形で使用し一人でも多くの患者を救えるか、情報発信のミッションを担っている。

石田英樹


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