東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 設立趣意書会則
東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 The Society of Urological Disease at Tokyo Women's Medical University
■ 2020年度年報
ホーム1.はじめに2.医局構成・新入局員紹介3.東京女子医科大学腎センター泌尿器科および関連病院入院・外来・手術統計4.東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2021年度の目標5.関連および協力施設 活動報告・2021年度の目標6.業績目録7.あとがき

1. はじめに

巻頭言

いよいよ、この巻頭言を書くのも今年が最後となりました。15年前の2006年、前任の東間紘教授から泌尿器科学教室を引き継ぎ、泌尿器科学主任教授に就任以来、医局、同門の先生方の多大なるご支援によりここまで何とか泌尿器科教室を運営することができました。本当にありがとうございました。ただただ、感謝の一言に尽きます。

泌尿器科学教室は、2006年当時、医局員は65名でしたが、2021年4月時点では109名を数えるほどとなりました。この間に新たに入局した医局員は73名に上りました。また、この間に他施設から女子医大泌尿器科に研修に来た臨床フェローは48名に上り、同じ釜の飯を食べた連帯感から学会などではフェローの先生の集まりが持たれています。特筆すべきは女性医師の多さで、実に全医局員の35%が女性泌尿器科医であり日本一の女性泌尿器科医数となっています。

臨床面では、女子医大泌尿器科は国内でも一目も二目もおかれるチームに育ってきたと思っています。これらの躍進の一例をあげると2006年の就任当時、本院における腎移植は年間73例でしたが2020年には、週3症例の移植体制から4症例体制となりました。新型コロナウイルスの影響もあり4月5月はやや症例数が落ちたものの、年間134例とほぼ2倍となりました。さらに八千代医療センターでは、千葉東病院が腎移植を停止したこともあり症例が増加し、月4例、すなわち週1例の腎移植が行われています。泌尿器科グループとしては、大久保病院、戸田などの関連施設を入れると年間300例近い腎移植症例となりつつあります。腎移植は年々増加の一途であり、多くの先生方の努力により世界トップレベルの非常に良い成績が挙げられています。血液型不適合腎移植は世界一の症例数と成績を誇っており、TWMU Urology, Transplantチームは世界中にその名が知られています。
また、代表的な泌尿器科悪性腫瘍の一つである腎がん手術は、2006年は年間95例でしたが、2020年は378例と約4倍近い驚異的な伸びを見せました。これは東日本大震災のあった2011年、当時、都内でも数少なかったダビンチを常磐病院、常盤理事長のご英断、ご支援により導入できたことが非常に大きかったと思っています。2014年には腎がん部分切除が開始され、近藤教授の大変な努力により年々症例を増やし、その後、高木先生たちの努力により2020年のダビンチによる腎がん部分切除術は321例となり日本一となりました。さらに、近藤教授の下、東医療センターでは87例のダビンチ部分切除術が行われ、全国2位となり、全国1,2位を独占することとなりました。まさに快挙といっても過言ではないでしょう。さらに女子医大全体では泌尿器科以外にも呼吸器外科、産婦人科、外科、などのロボット手術も増加しており、女子医大全体の年間のロボット手術は約700例弱となりこれも非公式ながら日本一の症例数となったようです。本院ではXi3台の日本で一番多い3台体制となっていますが、婦人科、呼吸器外科、消化器外科の症例が増えており曜日によってはロボットがやや不足気味になっています。八千代、東にそれぞれ1台づつあり、戸田中央病院、常磐病院、済生会川口病院にそれぞれ1台と泌尿器科チーム全体で8台のダビンチが稼働していることになります。症例数の増加により近い将来にロボットを増やす予定となっています。ロボット支援手術の導入に伴い術後管理も簡素化しており、腎がん部分切除術は術後3日で退院しています。

昨年もご報告しましたように東医療センターは、その後も順調に工事が進み2021年中に移転が完了し、「東京女子医科大学付属 足立医療センター」として開院する予定です。総病床数は450ベッドとなり、地域のがん診療拠点、災害対応拠点、小児・周産期医療拠点、救命救急診療拠点としての役割が期待されております。近藤教授が赴任して4年たちましたが、手術症例数が激増しており前述の通り、ロボット支援腎部分切除術は年間87件と全国2番目の症例数となっています。また、昨年から腎移植も開始され少しづつではありますが症例数が増えつつあります。

八千代医療センターも増床され501ベッドとなり、ユニット系の新設などもあり大きく発展しています。ダビンチも現在週1-2件の手術が行われています。また、腎移植症例も前述にように千葉県内で八千代医療センター以外に移植を行う施設がなくなったこともあり急に症例数が増加してきており、月4例の腎移植を施行しています。今後は千葉県内でも有数の高度医療の行える大学病院として発展が期待されています。

研究面では、石井先生、雑賀先生(理学博士)が中心となり、多数の大学院生がしっかりと研究を進めておりそれらの成果は一流の英文雑誌に多数採用されております。2006年以来これまでに28名の大学院生が研究に従事しました。2021年4月時点で現在、外部の研究機関で研究中の院生も入れると5名の大学院生が在籍しています。特に昨年からは東大宮崎研究室とのAIM研究が大きく進展しつつあり大きな成果が期待されています。腎不全患者に対するAIMの効果を見る研究が進んでおりましたが、今年は腎移植モデルを用いたAIM研究が開始され非常に興味深いデータが出ており大きく進展するものと思います。また、腎移植患者の最適治療を提供できるAIプログラムがアクセンチュアとの共同研究により大きく進展し今年は論文化が予定されています。AIの研究に関しては2名の大学院生が研究を開始しており今後の研究が大変期待されます。さらに、Twinsとの共同研究ではiPS細胞細胞シートによる腎不全の悪化防止の共同研究も進みつつあります。また、今年になりAIMのコロナ関連研究でAMEDの研究費も取得でき、ますます研究が盛んになっています。

さて、昨年は新型コロナウイルス感染症が瞬く間に国内に広がり、病院運営はじめ日常生活は激変してしまいました。女子医大では2月の段階でこの新型コロナウイルス感染症に対する厳重な対応を開始し、3月初めにはすべての入院患者に対してPCR検査を行う体制を確立しました。この間、病院一丸となって対応に当たりこれまでのところ院内感染やクラスターを発生させることなく経過しています。
しかしながら、2021年4月の現状では新型コロナウイルス感染症患者が急速に増加しつつあり、第4波が確実に近づきつつあります。現状は、多くの新型コロナ感染症患者を受け入れつつ3次救急や高度医療も止めることなく通常診療を行っています。ようやくワクチンの接種も始まっており、今後患者数の増加に歯止めがかかり年内に終息することを祈るばかりです。

わたくしは、この4月からは、泌尿器科特任教授として勤務いたします。外来、手術はほぼこれまで通り行います。また、研究面はこれまで以上に力を入れる予定となっており、基礎研究に多くの時間を割いていく予定です。また、病院長の任期はあと1年あり来年までは院長職も継続となっています。
さらに2023年2月には臨床腎移植学会を主催することが決まっており、そろそろ学会の準備にかかるところです。今後とも皆様のご協力をお願いいたします。

最後に、昨年同様、院長としての激務を行いつつ、何とか週2回の外来、週3-5件の手術、いろいろなジャーナルの査読、学会準備などを行うことができているのは泌尿器科のスタッフの先生方はじめ泌尿器科チームの献身的な助力があってのことと心から感謝しています。

今後は私の後任の教授、医局員の皆さんとともに「至誠と愛」の理念のもと泌尿器科の発展に尽くしていきたいと思います。

2021年3月
小春日和の教授室にて
田邉一成


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