昨年の腎臓移植数は100を超えるところとなりました。数もさることながら生着率も間違いなく日本一を自負するところであります。その背景には女子医大泌尿器科の腎移植チームが世界に向けて発信する論文力にあると私は思います。
2012年度も優秀な論文を2つほど輩出いたしました。その1つは今後慢性拒絶反応の抑制に寄与できるかもしれないリツキシマブプロトコールの導入です。この免疫抑制方法は、同門会誌の場でも何度か触れたことがあります。2012年アメリカ移植学会誌(AJT)にて発表したものであり、同薬を移植開始時に導入することがその後の抗体産生能の抑制に寄与する可能性を唱えたものであります。慢性拒絶反応が抑えられれば移植腎の長期生着がさらに改善します。
もう1つの論文は、2013年Kidney Internationalの刊行になると思われますが、動物実験における抗体感作モデルの確立であります。皮膚移植にて感作されたラットのモデルに同系ラットよりの腎移植を行うことによって抗体拒絶反応のモデルを院生が作成しました。経時的に腎臓標本の観察やラット血清中に産生されてくる抗体量を測定することによって、抗体産生とその後に起きてくる移植腎臓の標本の経時的変化を1時間おきに手に取るように把握することが可能になりました。
話は変わります。昨年京都へ紅葉を見に参りました。紅葉が美しく色づくには3つの条件があるといいます。昼間の日差し、夜の冷気、そして水分であります。ある時は温かい人の心に触れ(昼間の日差し)、またある時は冷たい仕打ちにあい(夜の冷気)、それでも人同士の潤いを感じ(水分)人の心も美しく色づきます。
決して人も木も本来の力だけで美しくなるものではないようです。 |