東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 設立趣意書会則
東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 The Society of Urological Disease at Tokyo Women's Medical University
■ 2012年度年報
ホーム1.はじめに2.医局構成・新入局員紹介3.東京女子医科大学腎センター泌尿器科および関連病院入院・外来・手術統計4.東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2013年度の目標5.関連および協力施設 活動報告・2013年度の目標6.業績目録7.あとがき

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泌尿器科研究室 活動報告・2013年度の目標

2012年度の活動内容については2011年度と同様に、(1)サルを用いた免疫寛容の誘導、(2)小動物を用いた基礎実験(移植関連、腫瘍関連)、(3)抗HLA抗体の測定や臨床腎移植データー解析、(4)病理検体を用いた臨床解析や研究を行ってきました。

2012年度は2008年から過去5年にわたって、主に免疫寛容について研究してきた私立大学戦略的研究基盤形成支援事業が終了し、それについての研究成果に関する報告書の提出が求められていました。主に小動物、大動物の免疫寛容誘導に関する研究ですが、最終的に一定の成果を出すことができ、6名の外部評価委員の先生方にもAからDの4段階評価にてAならびにB評価をそれぞれ3名ずつ頂き、今回の一連の研究にて達成できなかった課題については継続研究にむけて努力していく必要があるかと考えています。ただ今後も研究を行っていける研究費を獲得するために、厚労省または文科省の科研費などに応募し、競争的研究資金を獲得していく必要があります。現在昨年度末に応募した研究計画の結果がそろそろ出る予定で、ある意味試験結果を待つ学生の心境です。

サルの実験においては未だ免疫寛容誘導に成功したといった状況ではありません。自然界に生息するサルは様々な抗原にさらされているためか、メモリー細胞の割合も多く、免疫応答が強く起こりやすいのがその一つの理由と考えられており、こういった特性が免疫寛容誘導のハードルを高くしていると思われます。しかしながら昨年度はドナーの骨髄移植を行う際のサルへの前処置を抗癌剤より全身放射線照射に切り替え、新規の補助刺激阻害薬を購入して併用することにより、レシピエント内にドナー細胞が混在するキメラの状態を作ることに成功し、一歩前進した感じです。2013年度の活動目標に一つは、このプロトコールをさらに発展させて安全で有用な免疫寛容誘導のプロトコールを作成することです。サルの腎移植は今までどおり山梨県小淵沢にある動物実験施設に赴き、骨髄移植と腎移植を行っています。放射線照射は藤沢市にある日本大学生物資源科学部にサルを搬送して行っています。グローバルにはヒトにおける免疫寛容誘導の報告が少しずつ出てきていますが、長期に経過観察する過程で様々な問題が出てきております。こういった背景から少しでも有用なプロトコールを開発し、将来的に当科で臨床応用できればと思います。

小動物を用いた実験については2010年度に文科省の前立腺癌の治療についての戦略的研究基盤形成支援事業の一環として研究を進めています。研究内容は新規の放射線増感剤を併用した前立腺癌細胞株に対する放射線療法の研究です。これに関しては一定の成果がでており、現在はそのメカニズムを解析中です。移植関連の研究としては、調節性T細胞を誘導する薬剤を用いたマウスの研究について論文が完成しており近日中にsubmitします。またラット腎移植における感作モデルに関する論文がKidney Internationalにacceptしており、少しずつですがその成果が実を結びつつあります。2013年度の目標は、これらの各プロジェクトをさらに応用させることと、サルで検討しているプロトコールを小動物で推し進め、問題点を抽出してその解決策を見出し、サルへのプロトコールに応用発展させていくことだと思います。

また、腎移植の臨床に欠かせない、抗HLA抗体の測定やリンパ球サブセットなどの免疫学的解析も行っておりますが、昨年度はクロスマッチ陽性症例に対する脱感作療法もスタートしました。これらの血清学的解析も研究室にて行っております。また腎移植の臨床データーを定期的に整理する作業も当研究室で行っています。どちらも大変な作業ですが昨年度も担当者の頑張りがこれらを支えています。

本年度は3名の大学院生が新たに研究室に出入りすることになり、研究従事者も10名を越えるようになりました。本年度の3名のうち1名は心臓血管外科からやってくることになり、ますます外部からのニーズに答えるような研究テーマを与え、それを形に残せるような体制作りが必要になってくると考えます。今後も研究室を盛り上げ、基礎、臨床の両分野において、中身の濃い研究成果を残せるような研究室作りをめざしたいと思います。

尾本 和也

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