東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 設立趣意書会則
東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 The Society of Urological Disease at Tokyo Women's Medical University
■ 2009年度年報
ホーム1.はじめに2.医局構成・新入局員紹介3.東京女子医科大学腎センター泌尿器科および関連病院入院・外来・手術統計4.東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2010年度の目標5.関連および協力施設 活動報告・2010年度の目標6.業績目録7.あとがき

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前立腺腫瘍センター 活動報告・2010年度の目標

橋本先生から実務を引き継いで約1年経過しましたが、本当にあぁっっっという間でした。一部に飯塚のアゴがあがっているという噂が有りますが、“(つらいときは)空を見よ”という尊敬する先生の言葉を思い出し、空を見上げているためと思います。天を仰いでいるという訳では有りません。

2009年は前立腺腫瘍センター設立3年目から4年目にかかる一年で、立ち上げの時期から、充実を図り今後の方向性を模索する時期へと転換点を迎えつつあるように思います。当初の目標として鏡視下手術の安全な導入、放射線科との合同カンファレンスの定例化、進歩の著しい組織内照射の導入が掲げられていました。これらは順調に軌道にのり2009年には鏡視下前立腺全摘が60例、小線源療法が40例、高線量率組織内照射が37例といずれも対前年比20%ほどの増加でした。順調に治療件数が増加する一方で問題点も散見されるようになり、これらをふまえ今年の行動計画として以下の点を挙げたいと思います。

(1)鏡視下前立腺全摘術式の改善・次世代術者の育成
2009年はのべ60例の前立腺全摘術を行いました。かなりchallengingな症例を含みつつも全例鏡視下に完遂可能でありました。本年は開腹症例が1例も有りませんでしたが、これは開腹手術の方が望ましいと思われる高リスク症例がIMRT(強度変調放射線療法)やHDR(高線量率組織内照射)を選択することが増えているという側面と、鏡視下手術の技術向上による前立腺周囲の広範切除が可能となってきたことでchallengingな手術が増えているという両側面が有るように思います。大きな合併症は有りませんでしたが糖尿病や肥満、抗血栓療法など複数の手術Riskを抱えた症例も適応に組み入れるようになったため、術後のリンパ瘻や後出血などのトラブルにより開腹処置を要す症例が見られました。また尿失禁率の改善に伴いバルンカテ抜去後の尿閉を来す症例が見られるようになり、2次的な吻合部リークなど重篤な合併症を惹起することがあり、症例によりカテ抜去時期を調整するようになりました。尿禁制率は1ヶ月29.7%、3ヶ月62.5%、6ヶ月76.7%、12ヶ月98.1%とまず良好な結果を得ています。また神経温存手術は60例中、片側温存18例、両側温存10例に施行しました。現在までの全鏡視下症例の性機能温存率は、観察期間350日(中央値)で片側29.5%、両側66.7%と短い期間でまずまずの結果と考えます。現在、神経温存術式として両側のNVB剥離のラインを腹側正中まで進め合流させることで網目状に腹側まで存在する神経を極力温存するSuper veil techniqueを両側温存適応症例に導入しており、また神経温存後の症例には性機能リハビリとしてタダラフィル(シアリス錠(R))を週1回投与することで早期の性機能回復を試みています。(1例ですが術後第7病日にintercourseが可能であった症例がありました。)これらの結果により更なる温存率の改善が見られることと思われます。

また、田邉教授、橋本講師につづく第3世代の術者育成が始まっており、今後術者不足による手術数の制限は改善されると思われます(もっとも手術枠の制限が一番問題ですが)。

(2)術後病理診断の迅速化
現在最大の懸案事項です。中央病理医に手術病理の診断を依頼していますが、結果が約3ヶ月待ちとなっています。スムーズな診断のために週に1日慈恵医大に赴き直接鷹橋先生に御指導頂くようにしています。

(3)前立腺カンファレンスの効率化・最適化
前立腺腫瘍カンファレンスの検討症例は291例と2008年度の322例には及びませんでした。それでも週平均7件程の検討症例数であり、朝の限られた時間で他のカンファレンスと縦並びに施行せざるを得ない現状で、議論の質を担保しつつ全症例検討の原則を維持しようと努力しています。より効率的なカンファレンスが出来るよう模索中です。

(4)臨床研究の充実
・全摘標本による前立腺癌のMapping Study
・術後QOL評価-放射線治療との比較におけるSF8,EPIC解析
・Docetaxelを用いた化学療法の至適治療
以前よりすすめている上記に加え、放射線科との共同研究が準備中です。

2010年は飯塚が病棟長を兼任する予定です。前立腺腫瘍センターの諸業務は本原稿執筆中の2月現在すでに外来班の先生方の協力を頂き分担しつつ、すすめる体制を作っています。病棟業務および前立腺腫瘍部門の諸業務が円滑にすすむよう諸先生方のご協力を宜しくお願い申し上げます。

飯塚 淳平

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