東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 設立趣意書会則
東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 The Society of Urological Disease at Tokyo Women's Medical University
■ 2008年度年報
ホーム1.はじめに2.医局構成・新入局員紹介3.東京女子医科大学腎センター泌尿器科および関連病院入院・外来・手術統計4.東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2009年度の目標5.関連および協力施設 活動報告・2009年度の目標6.業績目録7.あとがき

4. 東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2009年度の目標 >> 腎移植、腎不全、腎血管外科部門

腎移植、腎不全、腎血管外科部門 活動報告

昨年の移植総数は75例でありました。過去最高数であったと同時に生着率は100%で全員が透析の離脱を達成しています。改めて当科の移植手術及び移植管理のレベルの高さを感じています。

1.移植レベルの普及
100%以上のレベル上昇はもはやないわけであり、今後はどのようにしてこの水準を維持しさらにこの達成した高水準を関連施設にまで拡大していけばよいかが今後の問題です。
来年度より尾本先生が大久保病院で移植を開始します。当面月1のペースでなれるまで移植が行われます。また戸田中央病院では東間名誉教授が復帰され、今後コンスタントに月に2〜3例の移植を開始する予定になっています。必然的に関連施設を合わせた移植総数は100以上になることは間違いありませんが、質の維持は不可欠です。ご存じのとおり移植はうまくいけば研修医でも管理できる医療かもしれません。ただ10に1つ位の割合で地雷が潜んでいます。この地雷が爆発して診断と治療を誤ると患者は坂道を転がるように様態は急変します。昨年も本院で行われた移植の75例中1〜2例はこのような経験をしています。私自身移植患者を見て20年以上を経験してきましたが、未だにこのような恐ろしい症例に出くわします。昨年の4月の症例は初体験でした。移植手術中に起きた総腸骨動脈の解離性動脈瘤は結局心臓外科医のヘルプを得てレスキューしていただきましたが、これも手術中の判断を誤れば、移植腎臓はおろか、右足が動脈の血行不全によって壊死を起こします。今後、このような高齢者を含めてリスクのある患者を移植治療するにあたってますます移植手術は困難を極めるでしょう。われわれ泌尿器科医師の力だけではどうにもならない症例が再来することも容易に想像されます。
現在の高レベルを維持し他施設にまで拡大していくためには、移植班の中でのこのような情報の共有はもちろんでありますが、腎臓内科医をはじめとした他科の力が必要となってくることは間違いありません。

2.さらに新たな移植医療へのチャレンジ
今後の移植分野におけるチャレンジ課題としては、1、免疫寛容の導入による免疫抑制剤の中止。2、移植腎臓の長期生着。3、患者の免疫状態の客観的な数値による評価。でしょうか?
1、免疫寛容および、2、移植腎臓の長期生着は大学院生の課題でもあり他項に譲りたいと思います。3、免疫状態の客観的な数値評価をするべく教室で購入していただいたImmuknow(Cylex, MBL Japan)は、既にアメリカではFDAで認可され、いくつかの移植施設で臨床に応用されています。リンパ球の中でも特にCD4陽性ヘルパーT細胞の活性に照準を当て患者体内の免疫活性をCD4ATPを測定することによって客観的に評価しようとするものであります。いままで謎であったリツキシマブの免疫抑制機序、カリニ(ジロベッチ)肺炎を起こした患者の免疫状態さらには慢性拒絶反応やde novo抗体を産生してくる患者の免疫状態に至るまでを数値にて評価し、臨床の場にフィードバックしたいと考えています。
来年度は、1昨年度フェローであった公平先生や東京大学腎臓高血圧内科より崔先生が新たに当科の大学院に入られます。土岐先生は、AJTに論文も受諾され、めでたく日本の移植腎病理スペシャリストの1人を目指してオーストラリアへ間もなく旅立ちます。瀬戸口夫妻は困窮の中アメリカで頑張っておられます。
ますます医局員も増員となり、さらに活力のある世界有数の移植グループのひとつとして邁進いたす所存です。
石田英樹

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