東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 設立趣意書会則
東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 The Society of Urological Disease at Tokyo Women's Medical University
■ 2008年度年報
ホーム1.はじめに2.医局構成・新入局員紹介3.東京女子医科大学腎センター泌尿器科および関連病院入院・外来・手術統計4.東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2009年度の目標5.関連および協力施設 活動報告・2009年度の目標6.業績目録7.あとがき

4. 東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2009年度の目標 >> 泌尿器科第2研究室

泌尿器科第2研究室 活動報告

平成20年度の泌尿器科第二研究室は、頭脳、実務的に研究室の大黒柱であった瀬戸口先生が大学院卒業、アメリカ留学のために一旦第2研究室を離れたため、土岐、飯田の2人となった。それぞれが個別のテーマを持ち、精力的に研究に取り組んでいる。当研究室のテーマである(1)大動物を用いた免疫学的寛容の導入、(2)小動物を用いた免疫学的寛容破綻のメカニズムの解析、(3)免疫抑制剤の新規使用法の開発、(4)臨床腎移植のデータ解析について本研究室の活動を報告する。

(1)大動物を用いた免疫学的寛容の導入の試み
平成15-19年度まで文部科学省私立大学助成学術フロンティア研究費の「ドナー特異的免疫寛容誘導の試み及びヒト臨床応用のためのプロトコール作成に関する研究」のテーマにて、新村、瀬戸口先生を中心に実験を進めてきた。
サルを用いた骨髄キメラ誘導による中枢性寛容の成立を目的とした検討結果により、一時的にキメリズムが誘導されるものの、結果的にはドナー骨髄細胞は拒絶されてしまうことがわかった。そしてその過程でレシピエントCD8+メモリーT細胞が顕著に増加していることを見出した。これは、骨髄キメラ作成時に行う前処置によりレシピエント体内でリンパ球減少状態が誘導され、それに伴い残存したレシピエントCD8+ T細胞が恒常性維持増殖(Homeostatic Proliferation、以降HPと略す)により増殖、メモリー様細胞へ分化したためであると考えられる。このようにHPがキメリズム破綻の大きな原因である可能性が示唆された。
これらの結果をふまえ、今後はさらなるプロトコールの改善を検討しながら研究を継続していく予定である。サルに関しては、田邊教授の指導の元、今年度後半より尾本、時田先生を中心とした新プロジェクトチームを立ち上げた。非常に大きなテーマであるので、これまで以上に研究室全体が一丸となって取り組んでいきたい。

(2)小動物を用いた免疫学的寛容破綻のメカニズムの解析
本来は小動物→大動物での検討が順番的に妥当なのだが、上述のサルでの結果の詳細を検討する目的で立ち上げた実験である。モデルはマウス心移植モデルを採用し、実際の心移植、解析の場を東京理科大学生命科学研究所を拠点として行っている。心移植モデルについては、これまでに補助刺激抑制による生着延長が顕著に確認されることがわかっていることから、補助刺激抑制により成立した末梢性寛容が、リンパ球減少状態の誘導により破綻するかについて検討を行うことで、リンパ球減少状態に伴うT細胞のHPの関与について検討を重ねている。これまでに得られた知見としては、<1> 末梢性寛容が誘導されて心臓が生着しているマウスにリンパ球減少状態を誘導すると、寛容が破綻し心グラフトが拒絶される。<2> その際にはサルの系とほぼ同様のCD44+CD62L- effector/memory like CD8T細胞が比較的有意に増殖する(マウスの場合は同時にCD4も増殖してくる)。<3> 一方、末梢性寛容が成立し、心臓が生着しているケースでも、in vitro 解析でのhostのT細胞のalloに対する反応性はかなり高い、等の結果が得られた。これらに関しては追加実験をこなして何とか形に残し、サルの系に反映出来ればと考えている。

(3)免疫抑制剤の新規使用法の開発
この分野では本年度よりanti-IL-6 receptor mAb(MR-16)をマウス心移植モデルに投与する系を用いて検討を始めた。IL-6の作用動態と実験の詳細については割愛するが、MR-16自体は自己免疫疾患に対してはすでに保険適応のある抗体製剤であり、ここ最近爆発的に注目され始めたTh17細胞の解析とからめて非常に興味深いテーマである。個人的には腎移植の臨床応用に近く、かつ非常に有用性の高い検討になりえると思う。

(4)臨床腎移植のデータ解析
昨年に引き続き平成20年度も米国移植学会(トロント)、世界移植学会(シドニー)において計14演題の発表を行った。臨床病理の論文は土岐先生がAmerican Journal of Transplantation, Transplant Internationalに合計二報acceptされた。病理に関しては、データベースの更なる充実を計るためバンフ分類に基づいたスコアー化を過去にさかのぼって行っている。飯田も、と景気よくいきたいところであるが、(2),(3)の実験の他に移植以外の論文(Urology, International Journal of Urology, 泌尿器科紀要)の執筆とacceptに手間取り、移植関連ではSaudi Journal of Transplantationに一報acceptされたのみにとどまった。反省すべきであるが、今後さらに投稿の準備を進めている。

最後に土岐先生は本年度で大学院を卒業し、シドニーに留学予定です。来年度は京都大学より公平先生が、東京大学より崔先生が、そして現在臨床フェローで活躍中の平井先生が研究活動に加わっていただける予定です。新研究室への引越しもほぼ完了しました。臨床もそうですが、研究活動も仲間は多いほうが楽しいものです。それぞれがこれまで得た知識と手技を共有し、今後も泌尿器科第二研究室として基礎、臨床の両分野での研究成果を発表していく予定です。今後とも皆様のご指導の程、よろしくお願い申し上げます。
飯田祥一

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泌尿器科第2研究室 2009年度の目標

1. サル腎移植モデルにおける、免疫抑制剤を使用しない新規プロトコールの開発
2. マウス心移植モデルを用いた、記憶型T細胞の恒常性増殖のメカニズムの解明
3. マウス心移植モデルを用いた、α-IL6 receptor mAbの臓器移植における有用性の検討
4. 移植腎病理標本を用いた、基礎及び臨床的解析
5. 臨床、基礎英論文の発表
飯田祥一

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