東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 設立趣意書会則
東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 The Society of Urological Disease at Tokyo Women's Medical University
■ 2019年度年報
ホーム1.はじめに2.医局構成・新入局員紹介3.東京女子医科大学腎センター泌尿器科および関連病院入院・外来・手術統計4.東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2020年度の目標5.関連および協力施設 活動報告・2020年度の目標6.業績目録7.あとがき

4. 東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2020年度の目標 >> RCC研究部門

昨年(2019年)4月より、東医療センターに異動となりました。RCC研究部門の報告ですが、前半9/10は東医療センターに赴任してからの事、残りの1/10は現在の研究内容について書きたいと思います。

東医療センターの輸血部は、小児科の先生が部長代行をされておりましたが、退職に伴い内潟院長から本院輸血・細胞プロセシング部の菅野教授に「代わり」のお話があり、私に白羽の矢が立った次第です。

本院(河田町)は、赤血球液と新鮮凍結血漿(FFP)を合わせて、年間4万単位以上という全国で最も血液製剤使用量の多い病院です(全国で最も出血する病院とも言えますが)。東医療センターは赤血球とFFPで年間1万単位ほどですが、都内の400~499床の同規模病院平均の約1.5倍の使用量があり、三次救急や手術件数の多さを反映していると思われます。本院は専任の常勤医師2名と非常勤2名、臨床検査技師12名、看護師1名、研究補助員1名と事務3名の大所帯ですが、当院(東)は医師1名と臨床検査技師4人(全員女性)です。

さて、よく輸血部門って何をしているの?と思われる方も多いと思います。診療報酬上の輸血は手術(K)に含まれ、輸血を行うと手技料として輸血料(K920)および検査料(K920)、輸血管理料(K920-2)が算定できます。管理料算定上の施設基準として、専任の常勤医師や専従の常勤検査技師の配置、常時輸血検査ができる体制、輸血療法委員会の設置、副作用監視体制、適正使用の推進等が求められ、また、年間を通してFFP使用量/赤血球液使用量<0.54、アルブミン使用量/赤血球液使用量<2.0を満たすとさらに輸血適正使用加算を算定できます。実際「輸血」は「手術」に似ている部分があると感じています。安全な「手術」のためには、術前検査で採血・採尿・CT、心電図、呼吸機能検査等をして、手術の同意書をとり、手術室ではタイムアウトをして確認し、術後は合併症のチェック、退院後も外来で採血・採尿・CT等でフォローすると思いますが、「輸血」も安全な輸血のために輸血前検査で血液型、不規則抗体検査、交差適合試験、感染症検査をして、輸血の同意書をとり、輸血の際は製剤と患者を照合し、輸血副作用がないかをチェックし、輸血後も輸血感染症のチェックや必要であれば遡及検査をします。この一連が輸血療法であり、院内で行われるすべての輸血療法に対し、責任を持つのが輸血部門の仕事です。

本院ではさらに範囲は広く、造血幹細胞採取・保管や再生医療等製品の重症心不全に対する骨格筋芽細胞シート(ハートシート®)の調製や重症GVHDに対する間葉系幹細胞(テムセル®)の調整や、臨床研究としてNK細胞、樹状細胞、γδ型T細胞療法の調製、治験としてCAR-T細胞療法などなどです。当院では、そこまでできませんが、造血幹細胞採取・保管や再生医療等製品の管理は考えているところです。本院は輸血・細胞プロセシング部で、名称からは細胞調製までですが、東医療センターでは輸血・細胞治療部と、治療までできるように本院より一歩進んだ名称に変更していただきました。当院に赴任して、すでに300日以上が経過してしまいました。新病院竣工まであと533日(2020年2月14日現在)です。それまでに色々とやらなければいけないことがありますが、焦らず着実に進めたいと思っています。

臨床研究としては、引き続き腎癌に対する自己活性化γδ型T細胞を用いたがん免疫細胞療法を行なっています。再生医療等安全性確保法施行下では9症例が登録され、現在5症例が存命です。細胞療法のみで根治はできませんが、標準療法(転移部切除やTKI)との併用で、8年目、9年目、10年目と長期に治療を継続されている患者さんもおります。基礎研究では、産婦人科、化学療法緩和科の協力のもと、癌性腹膜炎による難治性腹水の患者さんから、腹水濾過濃縮時に得られるT細胞を免疫細胞療法に用いる開発を行なっています。もし興味のある若い先生がいましたら、連絡を下さい。

※「白羽の矢が立つ」は、良い意味だと思っていましたが、辞書によると「人身御供を求める神が、求める少女の家の屋根に白羽の矢を立てるという俗説から、多くの人の中から犠牲者として選ばれる。(三省堂大辞林第三版)」が本来の意味だそうです。現代では、「大抜擢」的な意味でも用いられるとのことなので、こちらだと信じています。

東京女子医科大学東医療センター 輸血・細胞治療部/泌尿器科(兼務) 小林博人


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