東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 設立趣意書会則
東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 The Society of Urological Disease at Tokyo Women's Medical University
■ 2019年度年報
ホーム1.はじめに2.医局構成・新入局員紹介3.東京女子医科大学腎センター泌尿器科および関連病院入院・外来・手術統計4.東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2020年度の目標5.関連および協力施設 活動報告・2020年度の目標6.業績目録7.あとがき

4. 東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2020年度の目標 >> 大学院研究室

大学院研究室 2019年度の活動報告および来年度への抱負

今年度の研究活動内容は、基本的には前年度を引き継いだ内容です。当研究室の研究テーマである①移植免疫寛容誘導の研究 ②腫瘍領域の基礎研究 ③新規薬剤による腎移植治療・臓器保存に関する研究について、活動状況を報告します。

①移植免疫寛容誘導の研究
REGiMMUNE社とは、NKT細胞を効率的に刺激するリポゾーム製剤に関する共同研究を行っており、2014年度には、NKT細胞の活性化を用いた免疫寛容誘導法(マウスモデル)を報告しました。本年度は、この免疫寛容誘導法と既存の免疫抑制剤の併用における影響を評価した論文(Transpl Int. 2019 Apr;32(4):443-453)を報告しました。さらに、この免疫寛容誘導系を自己免疫疾患の治療へと応用する試みを始めています。I型糖尿病マウスモデルに、この免疫寛容誘導法を行い、その後に膵島移植を行うことで、長期間に渡り正常血糖値を維持しました(Acta Diabetol. 2019 May;56(5):541-550.)。

日本初のヒト免疫寛容誘導による腎移植を成功させるべく、今後も研究を継続します。来年度は、学内の基礎系教室と共同研究を行い、更なる研究の発展につなげたいと思います。

②腫瘍領域の基礎研究
2名は国立がん研究センター研究所で研究を行っており、そのうち1名は免疫創薬部門にて(1)膵癌の腫瘍免疫微小環境の解析と(2)癌関連線維芽細胞と抑制性免疫細胞の相互作用の解析を行っています。泌尿器科研究室においても転移性腎癌の腫瘍免疫微小環境の解析と、カン研究所との共同研究として転移性腎癌における免疫チェックポイント阻害剤使用時の末梢血免疫細胞の変化の解析を行っています。また当院病理診断科及び横浜市立大学分子病理学講座との共同研究で希少腎癌、特に転座型腎細胞癌の臨床病理学的特徴の研究を行なっています。もう1名はエピゲノム解析分野(牛島 俊和分野長)にて、(1)透析腎がんのゲノム・エピゲノム解析、(2)前立腺がん局所療法後の再発予測DNAメチル化マーカーの開発、(3)胃底腺ポリープのゲノム・エピゲノム解析、(4)DNA脱メチル化によるエピゲノムリプログラミンングの機序の解明、について研究をしています。

腫瘍領域の基礎研究では、臨床症例が豊富な当院の特徴を生かして、臨床検体の解析に重きをおいた臨床に近い立ち位置での研究を目指しており、外来や病棟の先生方のご協力によりすでに多数の貴重な臨床検体が保存されております。これらの臨床検体を生かして、院内のみならず外部の研究機関や企業の研究者達との共同研究を開始しています。この結びつきをさらに太く広くしていくことで臨床家のみならず多くの研究者達とのネットワークを構築し、さらに良い研究(臨床に結びつく研究)ができるようになることを目指します。

③新規薬剤による腎移植治療・臓器保存に関する研究
カン研究所とは2つの新規薬剤に関する、腎移植治療の研究と虚血再環流障害に代表される臓器保存に関する共同研究を行っています。本年度は一定の成果が得られました。来年度も、引き続き研究を継続します。

今年度は、大学院生は4名(1名は海外留学中、1名は国内留学中)在籍しています。来年度は、1名の大学院生が卒業となり、3名の新規大学院生(1名は国内留学予定)が配属となり、大学院生4名が臨床研究・基礎研究を行う予定です。臨床研究推進センターの時田教授、公益財団法人ときわ会常磐病院の雑賀寛先生には、引き続き、研究の指導を行っていただきます。平井先生は、米国Stanford大学にvisiting assistant professorとして赴任し、当研究室とは国際共同研究を継続しております。

研究費の獲得については、今年度は公的な競争的獲得資金2件(国立研究開発法人日本医療研究開発機構医療研究開発革新基盤創成事業 [CiCLE:Cyclic Innovation for Clinical Empowerment]1件、科学研究費助成事業 [学術研究助成基金助成]1件)を獲得することができました。

来年度は、延期に次ぐ延期の上、ついに現在の総合研究棟から建設中の巴教育研究棟へ移設することが決定しました。今回の移設は、大幅な面積の縮小に加え、実験動物研究所・総合研究所・各診療科・基礎系教室を含めた大規模な移設となり、当研究室は約1ヶ月、研究の要である実験動物施設は少なくとも3ヶ月に渡り移設期間が設けられ、期間中は研究を中止せざるを得ません。このため、研究内容をよく吟味し、効率よく研究が進むよう実験計画を立案・実行する必要がこれまで以上に重要になってくると思います。

研究成果を出すことに加えて、大学院生の先生に、研究の楽しさを伝える事が私の責務と思っています。まだまだ自分のことで手一杯ではありますが、かつて石田教授の御講演の際に聞いた、山本五十六の「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」という言葉を胸に、まずは私自身が研究を切磋琢磨に行うことを心がけ、誰か一人でも興味深い結果が出た際には、ラボ全体で喜び、皆で関わるようにしています。(しかし、このことで最も救われているのは、結果が出ない日々に苦しむ自分自信かもしれません。)最近になって、結果が出て、より一層時間を惜しみ熱心に研究に励む大学院の姿を見て、嬉しく思います。健康には気をつけていただきたいですが、成果を出すと同時に、研究の楽しさを存分に味わって卒業していただけたら、それが私にとっては最高の喜びです。

来年度も、移植免疫寛容誘導の研究、腫瘍領域の基礎研究、新規薬剤による腎移植治療・臓器保存に関する研究について、移植領域・腫瘍領域共により多くの成果を上げられるよう精一杯頑張ります。また、来年度はこれまでとは全く異なる領域の新しい研究をスタートさせる予定です。来年度も、皆々様の御指導の程、宜しくお願い申し上げます。

石井瑠美


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