東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 設立趣意書会則
東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 The Society of Urological Disease at Tokyo Women's Medical University
■ 2018年度年報
ホーム1.はじめに2.医局構成・新入局員紹介3.東京女子医科大学腎センター泌尿器科および関連病院入院・外来・手術統計4.東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2019年度の目標5.関連および協力施設 活動報告・2019年度の目標6.業績目録7.あとがき

4. 東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2019年度の目標 >> RCC研究

今回は、RCC研究ではなく、私が現在所属している輸血・細胞プロセシング部での細胞治療に関する活動報告をしたいと思います。まず、私の所属しております「輸血・細胞プロセシング部」の紹介をいたします。

当部は1964年(前回の東京オリンピックの年です)に創立され、院内の血液製剤一括管理を実施した大学病院輸血部門です。輸血検査の他、心臓血管外科手術における新鮮血の必要性から、当初は手術当日に患者さんの家族・知人から院内採血を行うことが主たる業務でした。輸血後紅皮症が血液製剤中のリンパ球によって引き起こされることは、当部の十字猛夫元教授らによって明らかにされ、我が国の血液製剤取り扱い・適正輸血ガイドラインは清水勝元教授らにより策定されました。2000年から院内における細胞治療・再生医療の診療支援が藤井寿一前教授らにより始まり、院内の細胞加工施設(CPC)の管理・運営も行っております。

現在当部は、菅野 仁教授のもと、学会認定の専任医師3名と非常勤医師2名の計5人の医師、専任技師12人、事務職員3人、嘱託職員2人の大所帯です。医療安全上の観点から、当部専任技師のみで、輸血用血液検査が常時実施できる体制をとっています。2017年度の血液製剤供給量は、赤血球製剤17,812単位、新鮮凍結血漿18,442単位、濃厚血小板30,017単位、血漿分画製剤供給量としてアルブミン製剤174,111g、グロブリン製剤29,747gでした(ロボット手術日本一と比較して良いのかはわかりませんが、赤血球製剤+新鮮凍結血漿の使用量は東京で一番なので、多分日本でも一番と思います)。心臓血管外科手術を始め、臓器移植術等の血液・血漿分画製剤を多く使う手術が多く、適正かつ迅速で安全な血液製剤供給を推進しています。

また、診療支援業務の一つとして癌性腹膜炎や肝硬変による難治性腹水に対する腹水濾過濃縮再静注法のための腹水処理を積極的に行っています。当部では濾過濃縮腹水を「自己アルブミン製剤」として捉え、当部による一括管理態勢を構築し、電子カルテによるオーダーシステム、バーコードシステムによる製剤管理と取り違え防止、エンドトキシンや遊離ヘモグロビンの供給前検査などを行い, 安全性と品質管理の徹底を図っています。その他、血漿交換のアルブミン置換液の作製、赤血球液のシリンジ分割供給、洗浄血小板供給、クリオプレシピテートの作製供給等の業務を行っています。

細胞プロセシング業務としては、保険診療の末梢血単核球・造血幹細胞採取、再生医療等製品のハートシートの作製、先進医療の樹状細胞ワクチン製造を行っております。また、口腔粘膜細胞シートや重症下肢虚血への細胞治療の企業治験等も請け負っております。ハートシートは患者さんの骨格筋芽細胞を企業が培養したものを、当部のCPCで3日かけて培養し、シート化して手術室へ搬送します。保険償還が約1,200,000点という非常に高額な治療で、6枚の細胞シートを調製して、5枚心臓に貼り付けるものですが、1枚200万円ですので、シートを剥がすときに破れたり、丸まったりすると大変です。研究支援としては、泌尿器科、婦人科の癌に対する自己活性化ガンマデルタ型T細胞療法、血液内科のリンパ腫・骨髄腫に対する自己NK細胞療法のための細胞調製・供給前品質検査を受託し、当部職員(技師全員が細胞治療認定管理師資格、技師1名と嘱託職員1名が臨床培養師資格を持っています。)が細胞培養を行い、安定した品質の細胞製剤の供給が行えるようにしています。今後は日本でもキメラ受容体T細胞(CAR-T)などの細胞治療薬が登場してきます。CAR-Tは、現在米国では難治性白血病の治療薬として承認されていますが、1回約4,500万円です(効果がなかったらタダだそうですが)。高額な治療を保険診療でどこまでして良いのかは賛否両論とは思いますが、引き続き院内における中核部門としての責任を果たすべく日々精進してまいります。

小林博人


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