東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 設立趣意書会則
東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 The Society of Urological Disease at Tokyo Women's Medical University
■ 2018年度年報
ホーム1.はじめに2.医局構成・新入局員紹介3.東京女子医科大学腎センター泌尿器科および関連病院入院・外来・手術統計4.東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2019年度の目標5.関連および協力施設 活動報告・2019年度の目標6.業績目録7.あとがき

4. 東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2019年度の目標 >> 腎移植・腎不全・腎血管外科部門

中国の移植50万件は時間の問題 !!!

海外からの旅行客や医療ツーリズムが大変なことになっている。訪日外国人は今や3000万人を超えようとしている一方、来春より外国人の日本における就労や雇用の法律が緩和され、日本は海外の大渦の中に飲み込まれようとしている。

当然この波は医療界にも大きな影響をもたらしている。喫緊の対処が必要であるが、その中でもっとも遅れているのは健康保険制度である。早急に外国人に対する健康保険制度を整備することが必要であるのに、整備は遅れつづけ今日も何故か日本の健康保険を持っている中国人に対し免疫抑制剤を90日も処方しなければならないことが常態化している。

今年は私自身2件の外国人の移植を行った。1例は質の良い医療を求めてやってきたモンゴルの夫婦である。すべてを自費診療で行ったので健康保険の問題はない。ただ、東京女子医大に通訳がいないことには閉口した。しまいには何もわからないこの夫婦に入院手続きの説明はおろかトイレやふろの使い方まで3時間もかけて説明させられた。

ネパールの親子の移植の時にはその倫理感の違いに愕然とした。移植手術の寸前になってこの親子の家族(レシピエントの兄)が出てきてものすごい勢いで文句を言われた。曰く、“移植臓器というのはお金で買うものであり、親が子供に無償で提供するとは何事だ”とのこと。イスタンブール宣言や世界保健機構での〈臓器売買の禁止宣言〉について詳しく説明したものの、最後まで不満そうであり、ドナーの母親には手術後も電話の一本もなく、お母様はさびしく日本をあとにされた。良かれと思って母親の滞在期間に合わせて大急ぎで移植準備したものの、すごく後味の悪い仕事となった。聞くところによるとネパールでは親から子供への生体腎移植は行わないそうで、理由は兄弟の間で不平等感が生まれるという所以である。ちなみにネパールでは臓器移植はほとんど行わない。レシピエントはインドで高いお金を払って移植をするようである。もちろんこれは臓器売買にほかならず、件の患者もインドへ行って移植を行う前に使いまわしのダイアライザーでC型肝炎を患い移植もせずにネパールに帰ったという前置きがある。この患者はその後日本で7年間の透析治療を余儀なくされ、8年後の今回、ようやく夢かない今回の母親からの移植となった。

中国の移植総数は10万件を超えている。ちなみに昨年講演で訪れた成都市(パンダのふるさと)の四川省では省内だけでなんと7000例の移植を行うと聞いた。ドナーは生後間もないベイビーが増えているとのこと。中国で2番目に貧しい四川省では集中治療で赤ん坊の命を救うことより臓器提供の道を選ぶ親が増えてきている。もっとも移植先進国の欧米ですら一部の輩は臓器売買で私腹を肥やしている。

2018年末に訪れたベトナムは日本のバブル期のように華やいでいた。5年前には腎臓病になったら死ぬだけと透析医療もままならない国であったが、今年はホーチミン市だけで700もの腎移植を行ったとたいそう誇らしげであった(ちなみにベトナムの人口は約8000万人である)。

日本に就労で入国している第一位は中国、第二位はベトナムである。大変な多様化の時代になっている。医療従事者も相当な覚悟で臨まなければいけないようだ。

石田英樹


[ 前のページへ戻る ] [ ページトップへ戻る ]

Copyright (C) The Society of Urological Disease at TWMU All Rights Reserved.