東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 設立趣意書会則
東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 The Society of Urological Disease at Tokyo Women's Medical University
■ 2013年度年報
ホーム1.はじめに2.医局構成・新入局員紹介3.東京女子医科大学腎センター泌尿器科および関連病院入院・外来・手術統計4.東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2014年度の目標5.関連および協力施設 活動報告・2014年度の目標6.業績目録7.あとがき

4. 東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2014年度の目標 >> 泌尿器癌免疫治療部門

泌尿器癌免疫治療部門 活動報告・2014年度の目標

米サイエンス誌は、年末号にその年の「科学的な発見・進歩の10大トピックス」を掲載します。昨年のBreakthrough of the year 2013の一番は癌免疫療法の進歩でした。私自身、何でトップ1になったのか?と思いながら記事を読んでみました。一つは免疫抑制機序、特に免疫チェックポイント分子とよばれるCTLA-4(cytotoxic T-lymphocyte antigen 4)やPD-1(Programmed death 1)といったT細胞に負のシグナルをいれる分子に対する抗体医薬です。もう一つは、患者のT細胞に抗原特異的なレセプターの遺伝子導入操作をしたCAR療法(chimeric antigen receptor therapy)です。

抗PD-1抗体は当科でも腎癌に対して治験を行っていますが、癌細胞に発現しているPD-1を抗体でブロックすることで細胞傷害性T細胞が癌を攻撃するという機序の抗体医薬です。一方、抗CTLA-4抗体(Ipilimumab)では、標準治療では予後6ヶ月という進行メラノーマ患者の予後が平均10ヶ月後延長し、その4分の1が2年以上生存しています。一つの問題は、1クールがIpilimumabの3回投与で、12万ドル(約1200万円)という高額にあると思います。抗PD-1抗体(Nivolumab)もIpilimumab同様にB○S社の商品なので、米国では同じくらいするでしょう。そもそもPD-1は京都大学の本庶先生らが発見し、小野薬品と共同開発をしていました。その後小野薬品と米メ○レックス社と共同開発で完全ヒト化抗体のNivolumabとして開発されました。CTLA-4はPD-1よりも1年早く発見され、先に医薬品に承認されています。抗CTLA-4抗体もB○S社とメ○レックス社が共同開発をしていたので、当然PD-1開発の情報も得ていたのでしょう。なんとB○S 社は2009年7月にメ○レックス社を24億ドル(約2250億円)で買収してしまいました。そのため、NivolumabはB○S社に持って行かれてしまいました。腎癌の分子標的薬も6剤になりましたが、どれも海外の製薬会社によるもので、使えばどんどん海外にお金が出ていきます。PD-1は日本発の新規抗体医薬品になるところでしたが、残念な結果になってしまいました。京都大学は企業治験には参加せず、医師主導治験として卵巣癌の患者さんに試験を行っています。ただ、有効な薬剤なので患者さんにとっては早く医薬品として認可される事が福音となるでしょう。

一方CAR療法は、特に白血病の患者には著効し、寛解ではなく治癒に至る症例も出ています。現在CAR療法は、海外ではノ○ルティスファーマが企業治験しており、本邦ではタ○ラバイオが臨床研究や医師主導治験として開発をしています。

今後ますます免疫療法・細胞治療が発展していくものと思われます。文科省の「橋渡し研究支援事業」として行っていたγδ療法は、昨年度末で一旦終了しておりますが、再開に向けて着々と準備をしております。今後ともよろしくお願いいたします。

小林博人

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