東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 設立趣意書会則
東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 The Society of Urological Disease at Tokyo Women's Medical University
■ 2013年度年報
ホーム1.はじめに2.医局構成・新入局員紹介3.東京女子医科大学腎センター泌尿器科および関連病院入院・外来・手術統計4.東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2014年度の目標5.関連および協力施設 活動報告・2014年度の目標6.業績目録7.あとがき

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小児・形成泌尿器科 活動報告・2014年度の目標

2013年は2020年の東京オリンピック招致が決まり、日本食が世界遺産に認定された年でもある。“おもてなし”の心が日本の美点のようにいろいろな機会で報道された。日本人的発想と気遣いがおもてなしの原点であろうか。他者を気遣うということは日ごろの生活や仕事にも必要なことであろう。人間一人で仕事や生活をしているわけではないのだから。

小児・形成部門の2013年の入院手術件数は93件であった。膀胱尿管逆流現象21例(デフラックス注入9例、成人9例)、腎盂移行部通過障害13例(鏡視下7例、成人9例)、停留精巣17例(固定11例、摘出6例、腹腔鏡併用4例、尿路結石へのTUL7例、尿道狭窄への内視鏡下尿道切開術6例、真性包茎8例(割礼6例)、その他27例であった。1日入院例が20例あった。腎小児科からの解放腎生検や成人の膀胱直腸婁や尿管狭窄等の対応もしている。

腎盂尿管移行部通過障害の成人例では外来で逆行性腎盂尿管造影を行っていたが、検査時と手術時とで腎盂拡張の程度が異なる症例があった。ピンポイントでポートを挿入していく内視鏡下腎盂形成術ではポート挿入位置が微妙にずれて術中の操作が難しくなった。造影検査自体も疼痛を伴う検査であり成人例でも術当日の造影がよいのではないかと考えている。

外来での排尿時膀胱尿道造影を膀胱内圧測定と同時に行うようになって久しい。乳幼児ではほとんどの子が検査中啼泣するので内圧測定がきちんとできる例はごくわずかである。たまに乳児で内圧が測定できることがある。蓄尿期に2〜3回排尿筋過活動(DO)を認め、排尿が誘発されることが膀胱内圧変化よりわかるのだがこのDOが子供の成長とトイレットトレーニングによりどのような過程を経て消失していくのかはとても興味のあるところである。そして最近このDOのコントロールができていない子供たちが多いのである。泌尿器科の外来に数年前より昼間の尿失禁で受診する子供が増えている。昨年も報告しているが月4〜5人は昼間尿失禁を主訴に外来を初診する。年齢的には4〜6歳が多い。小学校入学前の相談時期は親にとって排尿の問題が大きいことを示唆する。特に夜尿症はないのに昼間は失禁するパターンは親にとっては謎であろう。全例に膀胱機能検査を行えばよいのかもしれないがマンパワーのこともありまずは抗コリン薬を開始する。約半数は抗コリン薬内服と定時排尿をすると尿失禁がコントロールできるようになる。効果のでなかった症例に膀胱機能検査を行うので全例に蓄尿期のDOかあるいは蓄尿終末期DO(急に尿意を感じるパターン)を認めることになる。DOの確認は抗コリン薬継続の根拠となるが難治例では子供自身の自己管理能力が低下している場合が見受けられる。排尿の自立は立って歩くというような動物が本来もっているような本能ではない。実は学習であり練習が必要な行動である。

自己管理能力や学習能力に障害を持っている場合は障害があることを前提に対応しなければうまくいかないことが多くこの点を小児心理の先生方にサポートをしていただいている。2013年からは月1回の心理カンファに参加して、症例の情報を共有している。心理に依頼していた症例では子供の学習・発達障害もあるが家庭内に問題を抱えていることが多く泌尿器科外来だけではわからない問題点が抽出される例もある。実際母親との親子関係のこじれから尿失禁が出現していた女の子は心理の対応のみで失禁が消失した。当院小児科が小児癌の拠点病院として登録され、小児心理、小児精神科の体制が確立されてきている。泌尿器科としてもさらに連携を深めていければよいと考える。

小児外科病棟の東5階はいつも子供たちの声が響き、2013年開校の若松学級にランドセルを抱えて車いすで通う子、先生が病室まで来て勉強を教わる子、母親に抱かれて寝ている子などいろいろな子供たちがいる。病棟稼働率は100%前後、夏休みでは100%を超える稼働率を出している。スタッフ一丸となって子供たちが気持ちよく入院生活が送れ、早期に退院ができるように頑張っている様子は見ていて気持ちのよいものである。外科系の場合は手術がきちんとできればあとは子供たちの回復力に任せればよいのである。元気になったらさっさと帰すが実は口癖である。2014年は4月から鈴木先生が国立成育医療研究センターに行くため、症例数は減ると思われる。無理してトラブルよりは若手の教育も含めきちんとした対応をして短期入院での治療を心がけるつもりである。淡々とやるべきことを片付けていけば実績に繋がると考えている。

家後理枝

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