東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 設立趣意書会則
東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 The Society of Urological Disease at Tokyo Women's Medical University
■ 2013年度年報
ホーム1.はじめに2.医局構成・新入局員紹介3.東京女子医科大学腎センター泌尿器科および関連病院入院・外来・手術統計4.東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2014年度の目標5.関連および協力施設 活動報告・2014年度の目標6.業績目録7.あとがき

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腎移植・腎不全・腎血管外科部門 活動報告・2014年度の目標

腎臓移植の分野もゲノム解析に関する論文が多く見られるようになってきました。移植に関して行われてきた今までの研究では、おもに血清をサンプルにしてフローサイトメータを用いたり、あるいは、移植腎の生検サンプルを材料に様々な免疫抗体を用いて染色したりといった手法に基づくものが中心でありました。血清中に認められるようになった移植前後のHLA抗体を見つけたり、移植腎に侵入した様々な細胞の種類を同定することがその目的にあります。この傾向は世界的にも共通したものでありました。昨今、移植の分野以外でも遺伝子解析を網羅的に行う手法が数多く取られており、全血からDNAを抽出することにより瞬時のうちに遺伝子解析を行っています。

東京女子医大泌尿器科の移植チームにも、この流れは着実に押し寄せてきています。理化学研究所(筵田主任研究員)およびシカゴ大学(中村祐輔教授研究室)との共同研究であります。これら来年度の中心的事業として現在倫理委員会に提出されているのは、@免疫抑制剤の副作用に関する網羅的研究、および、A移植患者のリンパ球TCR(T細胞レセプター)に認められる遺伝子変異と拒絶反応の関係を調べる網羅的研究、であります。

前者では、免疫抑制剤の至適投与量や起こるべき副作用などが抑制剤を患者に投与する前に事前に判明することが考えられます。また後者では、抗原提示細胞から移植片という抗原を提示された後の責任箇所であるT細胞受容体のアミノ酸配列の遺伝子解析によって、その後のT細胞の応答性がテーラーメードに(ドナーとの関係なども考慮して)判明する可能性を示唆しています。ドナーおよびレシピエントの遺伝子解析を行うことによって拒絶反応の発生率を数字として予想することが将来的に可能になるかもしれません。

実際のところ、今までの血清学的な研究に比べ、このような遺伝子ゲノム解析はなかなかわれわれの頭の中には実感として湧きにくいところではあります。ただ、このような研究が患者へもたらす貢献が多大であることは間違いありませんし、今から20年後いや10年後には常識の世界になっている可能性も否定できません。

石田英樹

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