東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 設立趣意書会則
東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 The Society of Urological Disease at Tokyo Women's Medical University
■ 2011年度年報
ホーム1.はじめに2.医局構成・新入局員紹介3.東京女子医科大学腎センター泌尿器科および関連病院入院・外来・手術統計4.東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2012年度の目標5.関連および協力施設 活動報告・2012年度の目標6.業績目録7.あとがき

4. 東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2012年度の目標 >> 前立腺腫瘍センター

前立腺腫瘍センター 活動報告・2012年度の目標

前立腺腫瘍センターとして活動を開始して5年間が経過し、飯塚が実務を担当して3期が経過しました。昨年度はセンターを揺るがす大きな事態が2つありました。

一つ目は放射線腫瘍科の秋元先生(現客員教授)のご栄転です。尿路悪性腫瘍、特に前立腺癌に対する放射線治療では国内のopinionleaderであり、泌尿器学会総会などでも頻回に放射線治療に関するシンポジウム、セミナーなどご覧になった先生がたも多いことと思います。院内では小線源永久挿入、高線量率組織内照射を実際に中心になって施行されており、毎週施行している前立腺カンファレンスでも指導的立場でご参加頂いておりました。昨年7月にがんセンター東病院の粒子線医学開発部長(放射線治療科長併任)としてご栄転されたことによりセンター全体としての放射線治療数は減少を余儀なくされ、特に組織内照射の治療数が減少しました。現在でも週1回外来と小線源永久挿入の指導に女子医大にお越し頂いておりますが、実質高線量率組織内照射は人材不足から施行が困難な状況になっており、小線源永久挿入も月に1-2例程度に減少してきております。高リスクもしくは局所浸潤傾向の強いものは強度変調放射線療法(IMRT)で治療する傾向がつよくなり、中リスクまでのこれまで小線源の対象であった症例は手術治療を選択する傾向が強くなってきていいます。

二つ目はロボット支援手術の導入です。ときわ会の絶大な御協力を頂くことで手術支援ロボットda Vinci surgicalsystemが4月に導入されました。十分な準備段階を経て8月26日に第一例目がおこなわれ、年内13例、3月末までに21例に対し施行し、幸い術中、術後の大きなトラブル無く経過しております。これまで鏡視下前立腺全摘術での約250例の経験が非常に有効に生かされていることを実感しており、早い段階で拡大リンパ節郭清や神経温存を要する症例にも積極的に取り組んでいます。未だ経験数が少ない現状ですが、3月末までに施行した21例の成績を簡単にご紹介します。21例の平均年齢は65.8歳、平均BMIは24.5、initial PSAの平均値は8.80ng/ml、平均前立腺体積32mlでした。グリソンスコアは6以下が5例(24%)、7が13例(62%)、8以上が3例(15%)で、臨床病期はcT1c15例(71%)、cT2a5例(24%)、cT2b1例(5%)、cT2c0例でした。D'Amico リスク分類はlow risk4例(20%)、intermediate risk 14例(67%)、high risk 3例(14%)であり、D'Amico分類でhighriskに該当する3例とリンパ節転移予測が高値であった1例の合計4例で両側拡大リンパ節郭清術を施行しています。神経温存術は13例(両側5例、片側8例)に施行しました。平均手術時間295分、平均コンソール操作時間214分、平均出血量(尿込み)は410ml、平均在院日数4.8日間、尿道カテーテル留置期間の中央値は13日。病理学的病期T2症例の断端陽性は5例で陽性で全例が尖部でした。8例目以降の14例ではDVCと尖部処理にEndoGIAを用いておりこの術式変更後は尖部での断端陽性例は1例(7%)に改善しています。またpT3a,pT3bの症例が1例ずつありました。1例で術後PSA再発を認めたがその他の全例で測定感度以下まで低下し維持できています。術後合併症は12例に13件ありましたが、治療に外科的処置を要するclavien grade3以上の合併症は2件でリンパ嚢腫でした。現在までの術後尿禁制はカテーテル抜去後1週間で24%、1ヶ月で44%、3ヶ月で87%、6ヶ月で100%と同時期に施行している腹腔鏡下前立腺全摘症例と比較して良好です。性機能に関しては観察期間が短く十分とは言えない現状です。今後も術式の検討・改善により制癌効果の改善をはかっていきたいと考えています。

センターでの2011年の治療総数を示します。手術件数は64件と前年比1.5倍増で、術者不足から減少を余儀なくされた昨年度からV字回復を果たしました。このうち13例がロボット手術でした。ロボット手術は現在週1例のペースですが夏以降週2例に増加する予定であり、さらに腎部分切除や膀胱全摘などへの導入も検討しております。放射線治療総数は小線源永久挿入41例、高線量率組織内照射26例、IMRT75例、3DCRT6例、救済照射4例であり前年比小線源永久挿入15%減、光線擁立組織内照射32%減と特に組織内照射の落ち込みが目立ちました。昨年度目標に掲げていた、当センターでの成績を論文化するという点では、未だ外科的治療に関するデータを形に出来ていませんので本年度の最重要課題として取り組んでいきたいと思っています。

本年度も引き続き宜しくお願い申し上げます。

飯塚 淳平

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