2011年の移植手術の総数は89例と過去最高でありました。その一番大きな理由としては、いままで腫瘍枠であった毎月第1週の金曜日にも移植が可能となり、平均週2日移植が施行できたためと思われます。脳死法案が確立した以降も、献腎移植の総数は全国的にも微増にとどまり、当科においても数的には不変で10例弱でした。
震災以来、2011年という年はあまり記憶にありません。残念ながら印象に残った症例も業績もほとんど思い当たりません。このような現象をロストメモリー症候群というそうです。あまりにもショッキングなことがありその記憶が残ると自然と他の記憶が打ち消されるようであります。年明けてから行った移植フォーラムが一番印象的でした。今回は近隣大学である順天堂大学、慈恵医科大学、東京医科歯科大学の腎臓内科の先生に集まっていただき、さまざまな移植に関する議論をする機会を1月21日に設けることができました。いままで紹介状でしか見えなかった先生方に直接拝見できたことは大変な収穫であり、今後、移植の最新の知識を数多くの腎臓内科医に知っていただくうえでこのような会の必要性を身にしみて感じた次第であります。
外科学会が発表した統計によりますと、現在の外科医が当直明けに手術でメスを握ることを体験したのは<いつも>が31%、<しばしば>が26%とありました。新聞には驚くべき数字とありましたが、みなさんはどうお感じですか?私はこんなものかと思いました。実際の数字はほぼ100%だと思います。我々のチームも献腎移植のときには摘出して帰ってきて移植するまでほとんど休まずに動き続けます。翌朝はまたいつものルチーンワークが待っています。移植班の医師数も次第に多くなり、脳死移植では計画的にタイムスケジュールが組めることで2日間徹夜などという激務は今後ないような気がします。激務が減ることでよりきめ細やかな移植医療が可能になります。日本一の移植施設として恥ずかしくない情報発信をしながら王道を歩んでいこうではありませんか。それには1つでも多くの英語論文を書くことが必要です。
震災地であるいわき泌尿器科および常磐病院は活発に診療をこなしています。新年度からは初めて常勤の医師が派遣され、4月10日より腎臓移植も再開されます。いくつかの新たな施設での移植開始も予定されています。女子医大泌尿器科移植グループとしてさらに発展します。
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