2011年度の活動内容は具体的には、（1）サルを用いた免疫寛容の誘導、（2）小動物を用いた基礎実験（移植関連、腫瘍関連）、（3）抗HLA抗体の測定や臨床腎移植データー解析、（4）病理検体を用いた臨床解析や研究を行ってきました。

サルを用いた免疫寛容の誘導の試みでは、昨年の報告同様、平成20年より文科省の私立大学戦略的研究基盤形成支援事業の研究費を取得していますが、2011年度はなかなか思うような成果が出せず、その年の中間報告書の評価も厳しいものでしたので、最終年度である2012年度はなんとか結果を出さなくてはいけない状況になっています。

サルの実験においては昨年度よりドナー骨髄移植による免疫寛容誘導を試みていますが、なかなか成功していません。この理由として自然界に生息するサルは様々な抗原にさらされているためか、メモリー細胞の割合も多く、免疫応答が強く起こりやすい印象です。こういった特性が免疫寛容誘導のハードルを高くしていると思われます。本年度はマウスのデーターを参考にした新しいプロトコールを用いて免疫抑制剤の減量、中止が可能かどうか検討していく予定です。サルの腎移植は今までどおり山梨県小淵沢にある動物実験施設に赴き、骨髄移植と腎移植を行っています。2012年度の目標としては、前述したとおり今年が研究事業の最終年度ということもあり何とか１頭でも免疫寛容を誘導できるサルを作成することになります。そのための様々な基礎実験も同時に進行していく予定です。グローバルにはヒトにおける免疫寛容誘導の報告が少しずつ出てきていますが、なかなかこれといった方法が出てきていません。こういった背景から少しでも臨床に応用できるプロトコールが開発できればと思います。

小動物を用いた実験については2010年度に文科省の前立腺癌の治療についての戦略的研究基盤形成支援事業のグラントを獲得しており研究を進めています。研究内容は新規の放射線増感剤を併用した前立腺癌細胞株に対する放射線療法の研究です。これに関しては一定の成果がでています。移植関連の研究としては、調節性T細胞を誘導する薬剤を用いた研究を理化学研究所と共同研究を行っており、こちらも一定の成果がでており本年度中には論文をだすことが可能かと思います。また腎移植後のgraft内の血液型抗原に関する解析は今年論文としてacceptしており、色々苦労もありますが、その努力が確実に実を結びつつあります。2012年度の目標は、これらの各プロジェクトをさらに推し進め、成果として残していくことだと思います。

また、腎移植の臨床に欠かせない、抗HLA抗体の測定やリンパ球サブセットなどの免疫学的解析も行っておりますが、これまで外注していた各種ウイルス関連の解析も研究室で行うことが可能となっています。また腎移植の臨床データーを定期的に整理する作業も当研究室で行っています。どちらも大変な作業ですが担当者の頑張りがこれらを支えています。

研究は色々と苦労もありますが、仮説をたてて、それに対する計画を立案し、実験を行ってその結果がうまくいった時のうれしさはひとしおです。来年度は外部から1名大学院生がくることも決定しています。今後も研究室を盛り上げ、基礎、臨床の両分野において、中身の濃い研究成果を残せるような研究室作りをめざしたいと思います。