東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 設立趣意書会則
東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 The Society of Urological Disease at Tokyo Women's Medical University
■ 2007年度年報
ホーム1.はじめに2.医局構成・新入局員紹介3.東京女子医科大学腎センター泌尿器科および関連病院入院・外来・手術統計4.東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2008年度の目標5.関連および協力施設 活動報告・2008年度の目標6.業績目録7.あとがき

4. 東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2008年度の目標 >> 腫瘍部門

腫瘍部門 活動報告・2008年度の目標

2007年度活動報告から前立腺腫瘍センター活動報告は別になされることとなりましたので、ここでは前立腺癌以外の領域について御報告させていただきます。

本年度は腫瘍班としては大きなトラブル無く経過することができました。スタッフの先生がたの丁寧な手術と病棟医の先生方のきめ細かい周術期管理のおかげであり、この場をお借りして感謝申し上げます。また毎週17〜20件の手術があるにも関わらず、これを28床のベッドでやりくりしてくれているベッド係先生のご努力の賜物であると思います。

腎癌では、この数年腎癌症例はほぼ80〜90例で横ばいであり、2007年も腎癌手術症例は88例となっております。手術室での手術枠はこの数年変わっておらず、このため手術数がこれ以上増やすことができないのが大きな原因であると思います。ただ術式には大きな変化が見られております。今後にむけて腎癌手術の目標は、腎温存手術の適応拡大によるchronic kidney disease(CKD)や透析導入の回避と鏡視下手術の適応拡大による手術の低侵襲化であります。

2007年は35例に腎温存手術を選択しました。腎温存手術の安全性、cancer controlも根治的腎癌と変わらないことが第一でありますが、近年のCKDに対する認識の高まりを受け、特に60才以下の若年者のT1b以下の症例では積極的に腎温存を図っております。まだ総数で30例程度と多くはありません。手術時間、術中出血量もT1a症例に比べると多くなる傾向はありますが、いまのところ局所再発もなく腎温存ができております。T1aはよほど腎洞部に発生したものでなければ腎温存を第一に考慮しております。また単腎、両側腎癌症例に対しては、体外腎部分切除+自家腎移植も行っております。最近の3年間で7例に施行しております。ATNによる術後一時的な透析は半数で必要とするものの全例で腎温存ができており、癌死例も透析治療は最後まで不要でありました。腎癌治療においても、CKDや透析導入による新たな合併症の発生をできるだけ防ぐという意味で、“腎臓病総合医療センター”としての泌尿器科としても貢献できるのではないかと考えております。体外腎部分切除は、2008年日泌総会のビデオシンポジウムでも取り上げられますし、AUAで演題採択となっており、特にCKDと絡めることで、注目を浴びるものと思います。

術式としては、鏡視下手術がかなり増えており、2007年は術前診断腎癌として手術を施行した例は100例でありましたが、このうち45例が鏡視下手術でありました。2006年が35例でしたので、鏡視下手術例もかなり増加してきております。また近藤、橋本の二人も腹腔鏡手術技術認定医となり、田邉、中澤、鬼塚、伊藤の諸先生方のいわゆる第一世代からわれわれのような第二世代に移ってきております。現在は、10年目ぐらいの先生を中心に鏡視下手術のトレーニングをしていただいておりますが、全国的に見ても20例の腎摘を術者でこなすのがかなり大変になってきているようです。当院の様に豊富な症例があると、ラパロのトレーニングを希望して来られる先生も増えてくると思います。すでに昨年ラパロのフェローが来ておりましたが、現在もラパロ手術の手伝いにいっておりますが、もうすぐ技術認定ができるところまで来ております。今後の課題は、当院で研修されている先生に対するラパロトレーニングプログラムを確立することであると思います。また他の施設からのラパロの臨床フェローの受け入れに対しても、フェローのためのプログラムも作成したいと考えております。

治療薬としては、2008年より分子標的治療薬であるネクサバールも認可がおり、3月からは当院でも使用可能となっております。臨床症例数が日本一になる当科での治療成績が、日本人に対する分子標的治療薬の使用法に大きく影響するため、東医療センターと同様のプロトコールで使用することで本邦における治療法を確立させたいと思います。ネクサバールの出現により臨床試験で行ってきているγδ細胞療法の位置づけをどのようにするかも考える必要があります。こちら登録期間がもう1年あり症例数の蓄積がまだ必要であり、サイトカイン療法→分子標的薬の間の治療として行うこととしていきたいと思います。

尿路上皮癌でも、最近は特に上部尿路腫瘍では、完全リンパ節郭清に意義について、2007年にJ Urol、Urologyにも掲載され、現在prospectiveにデータを蓄積中です。この演題も2008年AUAに採択されておりますが、腎盂尿管癌は欧米の厚い臨床データの中にあってぽっかり空いたエアポケットのようになっており、日本からデータを発信しやすくなっており、移植に負けずにデータを発信していきたいと思います。

以上、各領域においてテーマを持ちながら日常臨床を行っております。これに基礎研究を組み合わせていければよいとは思いますが、まずは臨床体制の確立を第一に考えております。これからは日本の腫瘍治療拠点として発展できればと考えております。
近藤恒徳

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