2017年は小児泌尿器科部門にとって厳しい年であった。6月に当科でフォローしていた患者さんが亡くなり、それが病院全体の問題に発展してしまったためにこれまで普通に行っていた家族との関わりが難しくなってしまったことや、手術室の増設や耐震工事のために日帰り手術が制限されてしまったことなど、病棟や外来、手術場と協力して日帰り手術が再開できるように東奔西走しているが、杯水車薪でしばらくはこの厳しい状態が続くと思われる。
ところで2017年の手術件数は116件、そのうち小児が61件、16歳以上が55件であった(表1)。小児では例年と同じく結石が多かったが、2-3歳と幼児の症例が6例と多く。若年化が目立った。成人の結石では先天性尿路狭窄(UVJO、UPJO)の合併のため、尿路再建まで必要とした症例が2例、腎盂形成術後の腎結石症例に対してはTUL+PNLを行った。
その他重症心身障害者の結石の再発が3件と多かった。
VUR、UVJOに対するUCN(尿管膀胱新吻合術)は16歳以上の症例が5例と多く、2例はDeflux注入術後の移植腎VURに対するUCNであった。
Deflux注入術は小児と成人を合わせて12例、そのうち移植腎VURは小児3例、成人3例であった。
Prune-belly症候群で尿道狭窄を合併した症例に対する腎移植があったが、新導尿路作成においてあらゆるパターンの導管利用法を準備して臨んだ。最終的には拡張や狭窄が多い方の尿管を利用することとなったが、尿管の血流温存に努めてMitrofanoff式新導尿路造設を行い現在のところ経過良好である。
ところでUPJOに対する腎盂形成術は未だロボット手術の導入には至っていないが、徐々に症例が増えてきている。
陰嚢水腫・鼡径ヘルニアに対する根治術、精巣固定術や環状切開術などの体表手術は例年並みであった。
腎臓小児科からの症例はいつもの小切開(3㎝程度)で行う開腹腎生検の他、ARPKDの肝繊維症に伴う巨大脾腫に対する脾臓摘出術があった。腎臓小児科のサポートは常にありがたく心強い限りである。
2018年の目標は昨年と同じく、小児から成人までの先天性泌尿生殖器領域の手術をますます安全に行っていけるよう努力すること、腎盂形成術においてRAPP(Robot assisted pyeloplasty)を本格的に導入できるよう前進したいと思う。
表1 2017年 小児・形成泌尿器科部門 手術件数
|
小児 |
16-19歳 |
成人 |
計 |
全身麻酔症例(件数) |
61 |
6 |
49 |
116 |
術式 |
小児 |
16-19歳 |
成人 |
計 |
結石関連(TUL、PNL) |
16 |
1 |
13 |
30 |
膀胱尿管新吻合術 |
5 |
2 |
3 |
10 |
環状切開術
| 11 |
0 |
2 |
13 |
後部尿道弁・リング狭窄 |
5 |
0 |
1 |
6 |
腎盂形成術(腹腔鏡) |
1 |
0 |
(12) |
13 |
腎摘出術(腹腔鏡) |
(1) |
0 |
(1) |
2 |
停留精巣固定術(摘出術) |
3 |
0 |
(1) |
4 |
急性陰嚢症
| 0 |
0 |
1 |
1 |
Deflux 注入術(移植腎) |
(3) |
2 |
4(3) |
12 |
陰嚢水腫・鼡径ヘルニア根治術 |
3 |
0 |
0 |
3 |
開腹腎生検術 |
1 |
0 |
0 |
1 |
膀胱皮膚ろう閉鎖術 |
1 |
0 |
0 |
1 |
尿道脱修復術 |
1 |
0 |
0 |
1 |
尿道形成術 |
0 |
0 |
1 |
1 |
尿道憩室摘出術 |
0 |
0 |
1 |
1 |
脾臓摘出術 |
1 |
0 |
0 |
1 |
Mitrofanoff式新導尿路形成術 |
0 |
0 |
1 |
1 |
迫田晃子
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