東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 設立趣意書会則
東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 The Society of Urological Disease at Tokyo Women's Medical University
■ 2016年度年報
ホーム1.はじめに2.医局構成・新入局員紹介3.東京女子医科大学腎センター泌尿器科および関連病院入院・外来・手術統計4.東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2017年度の目標5.関連および協力施設 活動報告・2017年度の目標6.業績目録7.あとがき

4. 東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2017年度の目標 >> RCC研究

つい先日(2017年2月16日)の新聞で、国立がん研究センターが、全国がん(成人病)センター協議会の協力を得て1999年から2002年の症例約3万5千件について10年生存率を発表しました。部位別で腎臓・尿路(膀胱を除く)全病期では66%で、1期では93%と良好でした。しかし、4期になると13.3%と低下しますが、膵臓の0.3%や肝臓2.1%と比較するとまだ希望のもてる数字のようです。現在、全ての悪性腫瘍はICD-O分類に基づいて登録されています。そして腎に原発する悪性腫瘍は、局在コードC64.9に分類され、腎盂・尿管はそれぞれC65.9とC66.9に分類されています。しかし、今回発表された全国がん(成人病)センター協議会のデータでは、腎・尿管(C64-66)のデータで、腎癌と腎盂尿管癌はまとめられております。また厚労省が出している主要部位別がん罹患予測でも「腎など」とまとめられてしまっていて、泌尿器科医からするとちょっと不当な扱いを受けているように思われます。内藤らが1988年から2002年の日本人有転移腎癌1463人のサイトカイン療法時代の予後解析をした結果では、10年予測生存率は9.1%と報告しており、今回発表された腎・腎盂尿管癌の13.3%と比較すると若干悪いようです。腎癌症例では1988年からと10年ほど古い症例があるためでしょうか?東京女子医大病院にいると、腎癌はcommon diseaseのように感じますが、癌全体ではわずか2%程度のminor diseaseです。大学で外来を10年以上していますと、術後10年経過して卒業する患者さんもいれば、転移がありながら10年治療を継続している患者さんもいます(もちろんγδ型T細胞療法もやっています)。そして当初は免疫療法のインターフェロンから初めて、2008年にネクサバールが出て、分子標的薬のシーケンスを行い、そして昨年からはまた免疫療法(免疫チェックポイント阻害剤)に戻っている患者さんもいます。インターフェロンで大きくなった癌が、分子標的薬で小さくなり、また大きくなった癌が、今度はニボルマブでまた小さくなるといった、今更ながら癌と宿主の不思議な関係を感じています。逆に言うと今までのがん免疫細胞療法は、免疫チェックポイント分子のおかげで、「効いているのか効いていないのかよくわからない」が、「副作用の少ない」「体にやさしい」治療であったいえます。巷のクリニックで、アルファベータ型T細胞とニボルマブを併用して、関連は明らかではないが、劇症型心筋炎を疑う経過で死亡した症例が報告され、厚労省から注意喚起が発せられています。これからは免疫が暴走しないようにかつ、治療効果を最大限にあげるような戦略を考える必要があると思っています。γδ型T細胞療法も基礎的なところでは、免疫チェックポイントとの関係を研究し、臨床的には新しい抗原を用いたより効率の良い培養方法の開発を行っています。PD-1の発見者でもある京都大学名誉教授の本庶佑先生が、研究に重要な3Cとして「Curiosity, Challenge and Continuation」を挙げております。今年度もこの3Cを実践していきます。

小林博人


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