東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 設立趣意書会則
東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 The Society of Urological Disease at Tokyo Women's Medical University
■ 2010年度年報
ホーム1.はじめに2.医局構成・新入局員紹介3.東京女子医科大学腎センター泌尿器科および関連病院入院・外来・手術統計4.東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2011年度の目標5.関連および協力施設 活動報告・2011年度の目標6.業績目録7.あとがき

4. 東京女子医科大学泌尿器科学教室 活動報告・2011年度の目標 >> 腎移植班

腎移植班 活動報告・2011年度の目標

平成22年の生体腎移植の総数は小児例9例を含み昨年78例でありました。過去最高数であります。さらに、平成23年度よりは青山病院での手術の開始に伴い、第1週の金曜日は今まで腫瘍の枠でありましたが、今後移植をする予定にしており、さらに数的な増加が期待できます。現在、生体腎移植希望の患者の手術までの待機時間はおおむね1年くらいに短縮されてきております。待機時間の短縮の要因としては、もちろん戸田中央病院や大久保病院での移植数の増加が挙げられます。なんとか移植希望の患者が外来受診をした半年後くらいには移植の手術ができるようになれば理想的ではないかと考えています。

病棟で昨年最も印象的であった患者は、肝臓移植後に腎臓移植を行った男性患者でしょうか?われわれが術前に考えていた以上に心臓の予備能がなかったため、患者は術後の輸液の過負荷から心不全をきたし一時は尿量ゼロの状態から血液透析の管理となりました。その後も術部の出血、さらに急性拒絶反応などすべてといってもよいくらいの外科的、内科的周術期合併症に見舞われました。沢田班長のもと、必死の術後管理にて現在この患者は事なきを得て元気に外来通院をしております。

学問的なところでは、2005年1月来、免疫学的にリスクのある患者に使用してきたリツキシマブ投与後の中長期的な投与効果がはっきりしてきました。この薬剤に関しては毎年この年報に書かせてもらっているように思います。移植後早期の急性拒絶反応を押さえるのみならず、抗体の産生を長い間にわたって抑制することによっていままで抑制することが不可能とされてきた慢性拒絶反応の抑制にも同薬は期待できるのではないかと考えています。

下の病理写真をごらんください(写真)。
血液型不適合移植後10年経過した患者の血管であります。この患者は血液型抗体ではなく抗HLA抗体の存在から残念ながらグラフトロスしております。赤で示したのがB血液型抗原(ドナー型)で、青で示したのがA血液型抗原(レシピエント型)です。真中の血管が示すように赤と青が混在したカイメリズムの像を呈しています。このようなレシピエントの抗原とドナーの抗原が混在するカイメリズムはドナー抗原が移植後長期にわたって生着するのに必要な免疫学的な現象といわれた時期もありました。この写真からわかるように実際は違うようです。この研究は現在、山口裕先生および大学院生の田邉起先生を中心に行われていますが、写真を見る限りカイメリズムは生着の要因というよりは激しく戦った免疫反応の戦績ということができそうです。

サルの実験は休日を削って日夜続けられています。免疫トレランスの達成はわれわれ移植医にとって永遠かつ最大、最後のテーマであることに違いありません。大動物を用いた実験によって1日も早く免疫抑制剤を使用しない臓器の生着が実現するよう日夜研鑽しています。

平成23年度より移植班には大学院生として沢田先生が新たにメンバーに加わることになりました。世界的に新たな情報発信のできる移植施設として更に頑張ります。

写真
石田 英樹

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