東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 設立趣意書会則
東京女子医科大学泌尿器科 腎泌尿器癌研究会 The Society of Urological Disease at Tokyo Women's Medical University
■ 2006年度年報
ホーム1.はじめに2.医局構成・新入局員紹介3.東京女子医科大学腎センターおよび関連病院入院・外来・手術統計4.東京女子医科大学泌尿器科学教室活動報告・2007年度目標5.関連および協力施設と活動報告・2007年度目標6.業績目録7.あとがき

4. 東京女子医科大学泌尿器科学教室活動報告・2007年度目標 >> 腎移植、腎不全、腎血管外科部門

腎移植、腎不全、腎血管外科部門活動報告

昨年は、泌尿器科のみで過去最高の67例の腎臓移植を施行し100%の生着率を記録しました。数のみならず生着率の改善によって現在外来では100組以上の腎臓移植患者が全国各地で待機しています。
100%の生着率となっては、これ以上はもはや生着率の改善は望めないわけでありますが、その一方で慢性拒絶反応によって移植腎喪失にいたる症例はいまなおあります。短期間における成績向上が改善した一方で、今後の方向性はこのような慢性拒絶反応による移植腎喪失を1例でも減少させることであることは言うまでもありません。
慢性拒絶反応はご存知のように急性拒絶反応の延長と考える一方で、新たに移植腎による感作によって惹起される反応でもあります。急性拒絶反応の発症は、10年前に比較すると導入時の免疫抑制剤の改良によって劇的な減少につながりました。このような移植後短期間における拒絶反応の減少は間違いなく慢性拒絶反応の減少、しいては長期的な生着率の改善に結びついていると言えます。
最近は新たに移植腎によって感作されるDe novo腎炎が話題になっています。すなわち、手術前には存在しなかった抗体が移植をして自己とは異なった臓器が入ることによって産生され、移植腎障害を起こしだすというものです。移植前には抗体は存在しなかったわけですから、まったく注意せずに免疫抑制剤を減量していくうちに蛋白尿が出現し抗体関連型拒絶反応によって移植腎喪失にまで至る恐ろしい病態といえます。出現する蛋白尿も大量であり治療に抵抗性であり外来でも治療には難渋します。何とかこのような症例を術前に検索することでテーラーメードの免疫抑制が出来ないか、考えています。同じような免疫抑制剤を投与し、蛋白が出てくる症例と出てこない症例がある原因はやはりホスト側の遺伝子レベルの問題ではないでしょうか?短期的な生着率が100%に達したいま、今後10年はレシピエントを遺伝子レベルで解析することによって、このような抗体を産生しやすい遺伝子をみつけ免疫抑制に留意することによって1年でも長い移植腎生着を目指そうと考えています。
昨年の年報でも書きましたように、抗CD20抗体であるリツキサンの使用が開始されてから1年が経過しこの薬のすごさをまざまざと感じました。使用を開始した当初は、血液型不適合移植における脾臓摘出の代替手段として投与を行ったのですが、次から次へと新たな発見がありました。同薬はご存知の通り1990年の前半に登場し血液内科の分野では頻繁に用いられている薬です。ところが昨年あたりから同薬は私たちのような移植分野のみならず、自己免疫疾患や腎臓内科疾患においていっせいに注目を浴びるようになってきました。血液型不適合移植における使用の当初の目的は、脾臓に多く存在しているメモリーB細胞をなくし長期的には抗体産生を抑制することと考察されてきたのですが、むしろリツキサンの主たる役目はメモリーB細胞からの抗体産生抑制に対してではなく、B-T細胞の相互作用を断つことによってリンパ球細胞間の連絡を絶つことにあるような確証が次から次へと発表されてきました。例えば、細胞浸潤型で意識障害にまでいたるSLEでは、リツキサンの投与によって細胞浸潤が急速に抑制され意識障害を改善することが明らかにされました。移植におけるリツキサンによる抗拒絶反応も、2次的に抗体の産生を抑制することは間違いないのですが、それのみではなくいわゆるMHCを介した古典的な細胞認識(直接的なものも間接的なものも)を強力に抑制する経路が大きく寄与しているのではないかと推察されます。
来年度はぜひこの機序を解析し、移植におけるリツキサンの抗細胞拒絶反応として発表したいと考えています。また、リツキサンを投与した後のメモリー機能の回復も重要です。すべて失われた、特にCMVウイルスなどに対する特異的なメモリー機能がNaiveB細胞よりどのように回復してくるのか、またそれは投与されたリツキサンの量によって差異を認めるのか、一番適切な投与量はどうであるのかなど、同薬における未解決な部分は多く残されています。
石田 英樹

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腎移植部門2007年度目標

(1) 現在進行中の臨床試験の続行および解析(オルメテックによる尿蛋白の抑制効果、ミゾリビン大量投与およびミコフェノール酸モフェティールの免疫抑制比較、ベシケアによる移植後の過活動膀胱への効果について
(2) 新たな臨床研究の開始(リツキシマブ投与下における急性拒絶反応抑制のメカニズムの解析‐出来れば動物実験で‐、リツキシマブ投与下におけるステロイドwithdraw
(3) Accommodated抗体の更なる解析
(4) 特に上記下線Projectに関しては重点をおいて是非とも結果を出していきたい
(5) 論文では、現在進行中の論文が少なくとも3本あり(de novo Ab analysis, Protocol Bx analysis, rituximab influences on CMV infection, suitable dose for rituximab to prevent acute rejection and virus infection, etc)Publish化へ
(6) リツキシマブ投与下におけるステロイドwithdrawはBreakできる重要な課題と考えている。
石田 英樹

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